先日がんの進行や転移に関して食品が影響しているのではないかという興味深い記事が
イギリスの科学雑誌『ネイチャー』に掲載されました。
それによるとアスパラギンという成分がありますが、そのアスパラギンのが不足した状態だと、なんと乳がんの細胞の成長が阻害されるそうです。
今日は食品によるがんの進行や転移に影響について考えてみたいと思います。
がんの進行や転移を促す成分の発見?
がんの進行や転移を促すような栄養成分の発見というのは、これまでごくわずかしか聞いたことがなく非常に興味深いものです。その成分を控えることでがんの進行を遅らせたり転移を予防することができるのであれば朗報です。
その研究内容とはどのようなものでどのような成分ががんの転移や進行を停滞させることができるのでしょうか。
アスパラギンの不足で乳がんの成長を阻害させる?
ネイチャーに掲載されたその研究論文によると、『アスパラギン』が不足すると乳がんの細胞分裂の速度を遅くできる可能性が動物実験により発見されたそうです。
あくまで動物実験ということですが、特定の栄養素を阻害しただけの実験結果ということで、がんの進行、転移の可能性となると医薬品やがんを攻撃する機能のように難しそうな問題ではないので多いに期待が膨らみます。
アスパラギンとマウスによるがんの進行転移の研究内容
研究ではマウスに対して、アスパラギンを阻害する薬品と使ってみたり、低アスパラギンの食事を食べさせるというな実験をしたそうです。
特に何も対策を施さないマウスの場合、通常2週間から3週間で死亡するようですが、この実験によると、アスパラギンを抑えていたマウスはがんの進行や転移を予防、停滞させるのに一定の効果があったという話しです。
もしこの実験が事実であれば、がんの進行や転移を防ぐために新たな薬や食事の取り方など、がん治療の新しい可能性が広がります。
参考:BBCNEWS 海外サイト
アスパラギンとは
アスパラギンとはアミノ酸の一種です。アスパラガスから発見されたためにこの名前がついたという話しです。
アスパラガスの名前に代表されるようにアスパラガスや肉類、大豆、魚介類、などに多く含まれている成分です。
アスパラギンの役目は人体にとって有害となるアンモニアを体外へ出す働きがあります。そしてアスパラギンは健康や免疫力にも影響するタンパク質の合成にも必要な栄養素です。
運動時の持久力の向上や新陳代謝を高める作用などもあるとされていて丈夫な体づくりには必要な栄養素といわれています。
アスパラギンの別の実験
アスパラギンの研究では90日間と一定期間に男女10名にアスパラギンを取り続けてもらったところ、男性では減量に効果がありました。
さらに脳や腎臓などの臓器の重量が増大したそうです。女性では血糖値やカリウム、血漿リン脂質が高くなったという研究結果が報告されています。
これによりアスパラギンは体感維持に一定の関係があり、必要以上に取り続けると血漿にも影響があるようです。
参考:NCBI 海外サイト
※血漿とは血液の中の液体成分。血液の55%が血漿でしめられている。
アスパラギンとアスパラギン酸は違う?
紛らわしいのですが、アスパラギンとアスパラギン酸は違う成分です。アスパラギン酸はアミノフェラーゼという酵素によってできるアミノ酸ということで、アスパラギンを加水分解するとアスパラギン酸ができるようです。
役目的には似ていますが一応違うものということです。この実験ではアスパラギンという話になっています。マウス実験でのアスパラギン酸との関連性はわかりません。
がん転移と栄養素の関係解明がこれまでのがん治療の弊害に一石を投じるのか
これまでがんは手術で腫瘍を取りきったとしても、目に見えない微細ながん細胞は血流を通って転移し、そこで血管を新しく新生し増えていきました。
この転移を食事療法やアスパラギン阻害薬のような薬によって予防できるとなると、かなり革新的にながん治療になります。
乳がんに限らずがんの多くは、リンパ節に転移してしまった場合、腫瘍とリンパを取った後にがんの転移の予防的措置として抗がん剤などを使うことが今でもよくあることなのです。
抗がん剤の副作用で肉体的にも精神的にも副作用でダメージを受ける人が多く、経済的にも大きな負担となり問題となっています。がんの栄養となる物質にブドウ糖があげられますが、糖質オフががんの予防や転移に効果が高い可能性をこのブログでも記事にしてきました。
ここで新たにアスパラギンという可能性が出てきたことはとても良いことです。
食事でアスパラギンを控えることは難しい?
アスパラギンががんの進行や転移を抑えるとなると、食事から少しもアスパラギンを取りたくないと思ってしまう人もいるかもしれません。
アスパラギンですが、健康上は必要なアミノ酸です。極端に控えるべき段階かどうかはまだ研究段階ですし、明確な答えはまだ出ていません。まだ別の成分との絡みもあるかもしれませんし、研究段階なので情報には振り回されないように注意はしたいところです。
アスパラギンは肉類や大豆、牛乳、じゃがいもなどに含まれているごくありふれた成分です。完全に避けることは難しいですし、アスパラギンにはメリットも多く含まれています。
現状、がん治療をされている方の場合、食事療法に関しては、少なくとも糖質を控えることを基本とし、アスパラギンは摂りすぎにならないよう、バランスの良い食事を心がける程度で良いのかもしれません。
ここまでアスパラギンががんの進行や転移に関係している可能性はわかりましたが、今すぐできる療法になるのか期待をしてしまった私としては複雑な心境です。。。
まとめ
- アスパラギンががんの進行や転移に関係している可能性がある。
- アスパラギンはタンパク質の合成に必要で多くの食品に含まれている。
- 今後アスパラギンを阻害する薬の開発がされるかもしれない。
- 現状、がんの食料療法としては糖質オフの方が現実的。
アスパラギンという成分ががん細胞の活動に大きな関係があることを示唆する研究なのかもしれません。まだまだがんについては未知なる要素が隠れていることを感じる研究でした。
がんの進行や転移が抑えられる物質や薬などが開発されれば、がんに対する恐れが大幅に減ることは確実です。ただ現状の食事療法では、糖質オフががんの進行や転移を抑えるのに最も有効ではないのかと個人的には考えています。
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